〈PR TIMES STORY掲載〉ゴミをまるごと資源に変える。「魚まるごと」の発想から生まれた21世紀の錬金術『ERSシステム』の開発秘話
いつも株式会社JETのウェブサイトをご覧いただき誠にありがとうございます。この度、成果の裏側にあるストーリーを届ける「PR TIMES STORY」に、弊社の『ERSシステム』開発秘話を掲載しました。是非ご覧ください。
株式会社JETは、特許技術で微生物を活性化し、発酵の力でゴミを資源に変える『ERSシステム』の開発・製造・販売を手掛けています。その原点にあるのは、魚類加工食品業を営む祖父から託された「魚1匹まるごとの栄養をいただく」というミッションでした。当時の常識では「夢のまた夢」と言われていた食糧廃棄の難題に一人挑んだのが、三男坊として生まれた下瀬眞一。研究に研究を重ね、ついにウロコ一枚たりとも捨てずに作った『ペプチドだし』の開発・商品化に成功しました。費やした時間は40年。しかし下瀬の開発魂はとどまる所を知らず、だし製造の技術を応用して『ERSシステム』の技術開発に成功します。『ERSシステム』とは何か?JETが目指す循環型社会とは?深掘りしていきます。
きっかけは祖父の遺言から。食品廃棄と「未利用資源」の活用ミッション
『ERSシステム』の開発者 下瀬眞一は、山口県下関の魚加工食品会社の三男坊として生まれました。創業者である祖父は「魚1匹まるごとの栄養を摂れば、天寿を全うできる」という考えから、「魚一匹まるごと、あますところなく利用した食品を作って欲しい」と、自身がなしえなかった夢を息子と孫に託した形となりました。その頃はエコやリサイクルなど言葉すらない時代で、「未利用資源の活用」と言っていましたが、このときの発想が今の『ERSシステム』の技術のベースとなっています。
当時、魚は「食べられる部分」が4割、あとの6割は「食べられない部分」として処分されていました。要は、その処分せざるをえないものを原料にして食べ物をつくれという、まだ20代だったにも関わらず、前人未到のミッションを与えられたわけです。
さてどうするか?業界の重鎮たちに相談してみましたが、答えどころかヒントすら得ることはできません。それもそのはず、業界の方々は「食せる4割」を美味しくする技術には長けているものの、「捨てる6割」については、知識も経験も情報も、なにも持ち合わせてはいなかったのです。
イワシとの出会いで決心した「魚くささ」に化学物質を使わない挑戦
孤軍奮闘を余儀なくされた下瀬は、ある日地元で大量に水揚げされるイワシを見て、イワシからエキス(だし)を作れないかという発想を得ました。小さなイワシは「まるごと1匹」も扱いやすいし、新鮮なイワシが手に入りやすかったこともありますが、一番の理由は栄養価が高いにも関わらず、食品として使われるのはごくわずか。ほとんどが飼料に回されている現状を「なんとかしたい」と思ったことでした。
船が港に入ると、すぐにイワシを加工場に運び、大きな釜のような装置に入れて圧力をかけて煮ます。その工程でイワシのエキスが出てくるのですが、油と強い酵素が含まれていて、牛乳のように真っ白です。これを1〜2日もおいておくと、酸化して嫌な臭いがしてきてしまいます。魚から油を分離するにはどうするか。当時一般的に使われていた凝集剤(添加物)に頼れば、簡単に油を濾過できることは知っている。しかし化学物質は一切使いたくない!食品業界の常識を問い、下瀬の探求心に火がつきました。
ひょんな会話を聞いて生まれた「膜濾過」という新発想
引き続き多くの大学や研究機関、企業をたずね回っても埒が開かず、家業でお世話になっている学術調査のプロにお願いするかたわら、遠路はるばる自ら国会図書館に通う日々が続きます。当時はインターネットで検索すれば多くの情報が手に入る時代ではありませんから、情報はまさに「足で稼ぐ」ほかありません。しかし一向に解決への糸口が見つかりません。
そんなある日、下瀬家に懐かしい来客がありました。博識なその人の話を興味深く聞いていた下瀬でしたが、ひょんなことから「消化」の話になり、ヤギの腸を濾過器にして胃腸の消化吸収を図る方法があることを知った時、下瀬の脳内に激しい閃光が走ったのです。
「そうか!腸膜か!」
「イワシの油を濾過するには、「膜」を使えばいいんだ!」
当時、膜の技術は医療には一部に使われていたものの、食品加工に使うなど誰一人考えもしない時代です。しかしこの瞬間、「膜で濾過する」という未来のビジョンがハッキリと描かれたのでした。確かにこの方法なら化学物質の出番はひとつもありません。
目指す場所が決まれば、あとは前進あるのみ。ここからは下瀬の快進撃が続きます。膜技術の最先端をいくアメリカの会社と粘り強く交渉を続けた結果、晴れて「限外濾過膜」を手にいれることに成功します。名前の通り限界まで網の目を細かくし、ごく小さな粒子も濾過できる膜で、宇宙技術としても応用されています。これを使うことで、イワシのエキスは澄んだ黄金色になり、何日置いても嫌な臭いはしません。積年の悩みが膜の技術によって報われたのでした。
「ペプチドだし」の完成、栄養食の業界や医学者の方々から好評の声
こうして生み出された黄金のエキス。最後に、これを乾燥・濃縮するのですが、成分の働きを止めてしまう冷凍や加熱ではなく、適温で水分を抜いていきます。これに、同じように抽出したカツオや昆布、椎茸のだし、無臭ニンニクを加えて完成したのが『ペプチドだし』です。
深く濃厚な味わいの『ペプチドだし』は、器官の働きを高める天然のハイテク栄養補給食品です。魚の頭からしっぽ、骨まで丸ごと使用しながらも、独自製法により脂肪分や不純物が除去され、カルシウムやマグネシウムなどの無機質も豊富に含んでいます。さらに、そのタンパク質はアミノ酸が数十個つながった細かい分子の状態なので、すぐに体内に吸収されるのです。消化がよいばかりでなく、肝臓や腎臓の機能を高め、生活習慣病の予防効果も期待できます。栄養食の業界では「だしと呼ぶにはあまりにもったいない逸品」と言われ、医学者からは「人体の食物の消化工程を再現している」と言われます。
広がる資源活用、「魚まるごと」から「ゴミまるごと」資源化へ
このような未利用資源の活用は、魚に限った話ではありません。家庭から出る生ゴミ、家畜の糞尿など、いろいろなものが日々大量に捨てられています。そこで、長年の魚加工の技術を生かして、ゴミをリサイクルして自然に還すシステムを新たに開発しました。
株式会社JETが開発した『ERSシステム』とは、Environmental Recycling Systemの頭文字をとったもの。日本語では急速発酵乾燥資源化装置と呼んでいます。これは、活性化した土壌菌の発酵の力を利用して、ありとあらゆる有機物を分解・乾燥し、さらさらの粉末にする技術です。「急速」とついているのは、1日あれば処理が完了するからで、一般ゴミでも産業廃棄物でも「有機物」ならなんでも分解の対象となります。
出来上がった粉末の使い道は、燃料・肥料・飼料・敷料などの「資源」となりますが、そのパフォーマンスも優れていて、燃料にすればよく燃え、肥料にすれば植物がすくすく育ち、家畜たちが喜ぶ飼料や敷料になります。
生み出された一連の技術は、自然の超ハイテクから学んだに過ぎません。その仕組みを解き明かすことは知恵の限りを尽くしても易々とは答えを得られません。しかし、自然界の不可思議というものに絶えず目を光らせて、真っ向から挑戦していくことが私たちの変わらない使命です。
本記事はPR TIMES STORYに掲載されています。