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一般廃棄物全般 2023.06.19

ERSが解決する一般廃棄物処理の課題

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このページでは、焼却炉で一般廃棄物を処理する際の課題と、ERS導入による課題の解決について詳述します。

<もくじ>

1.日本における廃棄物分野の環境対策の状況と評価

2.自治体が抱える焼却炉の課題

3.脱炭素へのシナリオと対応の傾向

4.JETの自治体向けフレームワーク

5.ERSシステムによる地域社会貢献


1.日本における廃棄物分野の環境対策の状況と評価

① 廃棄物処理施設整備計画
環境省は、「廃棄物処理施設整備計画」において地球温暖化対策の推進を重点課題として位置付けています。それら施設の省エネルギー化やエネルギー回収の効率化は当然のことながら、そこに集まる生ごみや木くず等のバイオマスの有効活用が温室効果ガスであるCO2の排出削減に繋がるとして整備を推進しています。また、燃料・飼料・堆肥を輸入に頼り高騰する今、国際情勢や市況の影響を受けにくい国内資源由来の製品へのシフトという観点からも、未利用バイオマス資源の有効活用が必至な状況にあります。

<廃棄物処理施設整備計画 ごみに関する指標、数値目標、達成状況>

指標2018年度計画2023年度計画案
一般廃棄物のリサイクル率目標:2022年度に27%を達成する。 達成状況:20%(2020年度) 目標達成は困難な状況にある。目標:2027年度に28%を達成する。
一般廃棄物最終処分場の残余年数目標:2017年度の水準(20年分)を維持する。 達成状況:約22年で推移しており目標は達成できる見込み。目標:2022年度の水準(22年分)を維持する。
期間中に整備されたごみ焼却施設の発電効率の平均値目標:2022年度に21%を達成する。 達成状況:20%(2020年度) 向上しているが達成の見込みは言及なし。目標:2027年度に22%を達成する。
廃棄物エネルギーを地域を含めた外部に供給している施設の割合目標:2022年度に46%を達成する。 達成状況:41%(2020年度) 向上しているが達成の見込みは言及なし。目標:2027年度に46%を達成する。

(出所)「廃棄物処理施設整備計画 2018年6月19日閣議決定 環境省」、「次期廃棄物処理施設整備計画(案) 2023年4月21日公示 環境省」をもとに作成

② 地球温暖化対策推進法
地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画である「地球温暖化対策計画」の進捗評価では、注目すべき指標が3つあります。一つ目は、エネルギー起源CO2排出に係る「ごみ処理量当たりの発電電力量」。二つ目は、非エネルギー起源CO2排出に係る「廃プラスチックの焼却量」。三つ目は、メタン(CH4)排出に係る「有機性の一般廃棄物の最終処分量」です。いずれも2030年度目標水準を上回るまたは同等程度になると考えられますが、目標の見直しと引き上げが検討されています。

<地球温暖化対策計画における廃棄物分野の対策進捗と評価>

対象 ガス具体的な対策対策評価指標等実績見込み・目標評価
201820202030
エネ起源CO2廃棄物処理における取組ごみ処理量当たりの発電電力量(kWh/t)284284-312359-428C
非エネ起源CO2廃棄物焼却量の削減一般廃棄物であるプラスチック類の焼却量(乾重量)(千t)275626752458B
CH4廃棄物最終処分量の削減有機性の一般廃棄物の最終処分量(乾重量)(千t)14010510C
【評価の凡例】A: 2030年度目標水準を上回ると考えられ、2018年度実績値が既に2030年度目標水準を上回る。 B: 2030年度目標水準を上回ると考えられる。 C: 2030年度目標水準と同等程度になると考えられる。 D: 2030年度目標水準を下回ると考えられる。

(出所)「廃棄物分野における地球温暖化対策について 2021年4月9日 環境省」をもとに作成


2.自治体が抱える焼却炉の課題

ごみを焼却する際に発生する主な負荷はCO2排出とコストです。それらの低減は、国の計画遂行において欠かせないものであり、低減の度合に直結する3つの要素の改善に自治体の注目が集まっています。

① 発熱量
焼却炉全体の能力に影響する発熱量=カロリーは、ごみの水分に大きく左右されます。一般的に、焼却施設で処理される家庭ごみに占める生ごみの量が3~4割程度を占め、水分がおおいためカロリーが低くなりやすく、化石燃料で補うことでCO2排出を招いています。

② 発電効率
ごみ発電の出力に対して、投入するエネルギーは可能な限りごみから取り出されることが望まれます。それでも安定燃焼のために化石燃料が追加され、CO2排出を招いています。化石燃料を減らしてもなお投入エネルギーを維持・向上させるためには、ごみの発熱量を上げ、尚且つ安定させる必要があります。つまり、発電効率には、まず投入するごみの「質」が問われます。

<発電効率の考え方>

外部燃料とは化石燃料を指し、廃プラスチック、RDF、木くず等は含まないものとする。

発電効率(%)= 発電出力 x 100(%)/   投入エネルギー( ごみ + 外部燃料

(出所)「高効率ごみ発電施設整備マニュアル(平成30年3月改訂)環境省」をもとに作成

③ 補修費
高温や酸性ガスにさらされる焼却炉は劣化するため、機能の維持管理には定期的な補修を要します。当社調べにおいては、その補修費は中間処理費の50%以上を占めると推定され、財政が厳しい自治体にとって大きな負担となっていることが懸念されます。

<補修費全国総額の推計>

中間処理費の全国総額(2021年度実績)2,307億円/年
補修費の全国総額(推定)1,166億円~1,546億円/年
中間処理費に補修費が占める割合(推定)51~67%

(出所)「ごみ焼却施設における定期補修費の実態と評価 2009年 廃棄物資源循環学会論文誌 Vol. 20, No. 3, pp. 171 – 179」および「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和3年度) 環境省」をもとに作成


3.脱炭素へのシナリオと対応の傾向

環境省が設定した「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」の重点対策領域Ⅲ(廃棄物施設・車両等の脱炭素化)において、焼却施設の脱炭素化が全てのシナリオに示されています。

具体的には、全施設でのエネルギー回収や発電効率の向上に加え、革新が伴えば、新設時には化石燃料の使用が大幅に削減されること、さらには全ての燃料がバイオマス由来に置き換わることが想定されています。環境省は、地域の脱炭素に貢献するごみ処理システムの構築に大きく影響するこれらのシナリオを推進するための仕組みづくりに取り組んでいます。

シナリオの実現に必要な対策として、化石燃料由来の助燃燃料の削減とバイオマスエネルギーの利用が打ち出されています。

① 化石燃料由来の助燃燃料の削減
現行では、焼却炉の「起動時の昇温」に大きなエネルギーを要し、多くの化石燃料が助燃燃料として投入されます。また、その昇温時にダイオキシン類が多く発生する傾向があるため、ダイオキシン類の発生抑制を考慮した助燃燃料の削減策を講じる必要があります。現在、バーナの使用により昇温を短時間で行うことによる、ダイオキシン類発生の抑制と省エネルギー化の両立が期待されています。

② バイオマスエネルギーの利用
既に複数の自治体で、ごみの発酵処理が実施されています。微生物の発酵熱を利用した処理には焼却工程がなく、焼却灰の埋立も発生しません。その成果物をバイオマス燃料として有効活用すれば地域のクリーンエネルギー循環を形成できますが、発酵処理に数か月間を要することや処理工程で悪臭や汚水が出るといった問題が立ちはだかっています。このような問題を解消することにより、ごみの減量化とともに化石燃料使用量の削減を加速度的に実現できます。


4.JETの自治体向けフレームワーク

私たちは、ごみの減量化と燃料化を図る独自のフレームワークで、自治体向けに事業提案や実証実験を行っています。実証実験では、自治体の焼却施設に搬入される家庭系ごみの全量を減量化・燃料化する実験のほか、使用済み紙おむつのみを抽出して減量化・燃料化する実験を実施しています。使用済み紙おむつを可燃ごみではなく資源化対象物として取り扱うことを複数の自治体が検討し始めている現在において、使用済み紙おむつの衛生的な減量化・燃料化に関する情報提供を行う目的で、実証実験サイトの見学にも対応しています。

学術的・専門的な研究による提言と、特許微生物を利用したシステム開発により、地域のバイオマス資源を循環させて、豊かでサステナブルな暮らしの環境を住民の皆さまに還元します。


燃料用植物導入型フレームワークもご提案可能です



当社は大学等の専門機関と連携して、バイオマス燃料化に適した植物の選定やその栽培方法に関する研究を進めています。生育スピードが速く、年間を通じて安定的に収穫できる植物は、バイオマス燃料にしてクリーンエネルギー(電気・蒸気)の生成に活用できます。

 燃料用植物の早生栽培とその燃料化を上図の基本フレームワークに組み込むことが可能です。そうすることによって、バイオマス燃料の活用促進とクリーンエネルギー生成といった成果だけでなく、「過疎化による耕作放棄地の増加」や「農業従事者の所得低迷」といった社会課題の解決を実現可能にします。

地域経済活性化に直結する「燃料用植物の栽培と燃料化」を、ぜひご検討ください。

 


5.ERSシステムによる地域社会貢献

JETが提供するERS(Environmental Recycling System)急速発酵乾燥資源化装置は、設置場所の周辺に生息する微生物を活用し、ごみを1日で殺菌・発酵・乾燥して資源に変える装置システムです。これによる成果物は、水分の低い良質な燃料や堆肥、肥料、飼料、敷料として利用できます。

食品ごみとプラスチック類の事前分別が不要で、混在したまま装置に投入できます。処理工程のすべてにおいて悪臭や排水を出さずに低水分で均質なバイオマス燃料を生成することができます。また、プラスチック類は水分や食べかすなどの付着物が取り除かれるため、良質なRPFとなります。ERSによる処理後のバイオマスとプラスチック類は、トロンメル(ふるい機)で分別することで、焼却炉への投入量をコントロールできます。

これらを化石燃料に代えて焼却炉に投入した際には、水分や燃焼カロリーが安定しているためオペレーションが容易になります。焼却炉の延命化のみならず、経験と腕が求められるオペレータの人材不足解消に大きく貢献します。

私たちは、都市生活ごみ、おむつ、し尿、水、汚泥、家畜糞尿、野菜くず、食品加工残渣、廃棄食品、建築廃材、街路樹や山の剪定枝、刈草、雑木など、これまで廃棄物として処分されてきた物たちを無駄にせず、貴重な未利用資源として活用することで最大限に地域の環境効率性を高め、循環型社会の構築に貢献します。

ERSシステムについて、詳しくは「ERSの仕組み・特徴」をご覧ください。